平成24年11月号

特集/過疎地域に生きる

 人口減少・超高齢社会の到来により、我が国では過疎地域が既に広範囲に存在しており、種々の問題が発生している。すでに顕在化している代表的な課題としては、自動車を運転できない方のモビリティ確保の問題があり、また、これに関連し、全国で600万人いると推計される日常の買い物に支障をきたしている居住者の生活に関する、所謂、買物難民の問題などがある。また、これらの地域で生活を送る障害者についてもその生活・モビリティに大きな課題を抱えていることが懸念されるなど、過疎地域での居住に関しては様々な問題が指摘されている。
 このような問題に対して、それぞれの地域ではそれぞれの課題に対する対策を講じるとともに、Uターン・Iターンなどによる居住者定住の促進や地域拠点の創出など様々な取り組みを進めている。
 今回、特集として取り上げた「過疎地域に生きる」というテーマは、既に多くの地域で問題となっている課題であるとともに、国全体での人口減少が明らかとなり、近い将来、さらに多くの地域にとってより深刻な課題となることが想定されるテーマである。また、それぞれの地域で取り組んでいる個々の課題は、多かれ少なかれ、都市部においても個別の課題としては既に認識され始めている要素であり、その問題が未だ顕在化していない地域にとっても、今から認識しておく必要がある事象を多く含んでいる。
 本特集では、過疎地域における課題について関連するプレーヤーが取り組んでいる課題とはどのようなものなのか、どのような対策がなされているのかについて述べていただくことで、人口減少下における持続可能な地域政策について考えてみる機会としたい。

企画・編集 岡山大学大学院環境生命科学研究科 准教授 橋本 成仁

 

過疎地域におけるモビリティ確保
 福島大学うつくしまふくしま未来支援センター特任准教授 吉田 樹氏

過疎地域の障がい者の移動と生活
 公益財団法人豊田都市交通研究所 三村 泰広氏

イギリスにおける地域公共交通をめぐる政策と計画手法
 島根県立大学総合政策学部総合政策学科講師 西藤 真一氏

買い物助け合いプロジェクト
 集落支援ヒビサト 阿部 典子氏

田園回帰を受けとめる地元の創り直し 〜2015年危機を乗り越えて
 島根県中山間地域研究センター研究企画監
 /島根県立大学連携大学院教授 藤山 浩氏


広場

鹿児島における高齢者の住まい、福祉と在宅医療
 社会福祉法人山陵会理事長 徳永 正義氏/特別養護老人ホーム副園長 瀬戸口 司氏

公営住宅の長寿命化へ向けた取組み〜自治体へのアンケート調査等を実施して〜
 社団法人日本住宅協会

大阪市営住宅における適正管理に向けた取組み
 大阪市都市整備局住宅部管理課長 内田 忠憲氏


住宅だより海外編

―国際居住年記念基金事業 海外の居住環境改善活動報告―
国際NPOと協働で、水に関する環境教育活動を実践中
 〜水の大切さを現地の子どもたちと一緒に考え行動します〜
  株式会社LIXIL CSR・環境経営推進部


書評

脱・住宅短命社会 住居管理と中古住宅市場の課題
 岡山大学大学院専任講師 関川 華氏