2017年11月号

持続する住宅地への経営的マネジメント

 高度成長期に全国の都市郊外部で,大量の住宅地が矢継ぎ早に開発された。少しでも早く,少しでも多くの区画を供給することが重要視された当時の住宅地開発においては,住宅地マネジメントの視点はほとんど取り入れられていなかった。

 1980代後半から,街並みの統一やコモン広場の導入など,新しい住環境デザインの手法が試みられるようになった。それに合わせて,まちなみを守るための建築協定,コモン広場を維持するための管理組合など,住環境の維持管理を目的としたマネジメントのしくみが,ようやく整備されてきたのである。

 近年になって,マネジメントのしくみを持たない郊外住宅地では,少子高齢化・空き家空き地の増加等の問題が顕在化した。一方で,地域コミュニティが街並みやコモンの管理に取り組んできた住宅地では,当初の住環境が良好な状態で維持されている。

 しかし,日本の住宅地には,なお,大きな課題が残されていることがわかってきた。街並みやコモンを当初の状態で維持するマネジメントが行われても,開発から30年後にはそれが陳腐化しており,若い世代が入ってこない,ということが起こり始めっているのである。そこを乗り越えて次世代への継承をはかるには,多様な世代にとっての魅力を地域のなかで常に生み出し続けなければならない。

 つまり,管理型のマネジメントではなく,時代に合わせて魅力を創発していくようなダイナミックな経営型のマネジメントが求められるのである。魅力を生みだして人をつなげる拠点をいかに経営するか?住宅地の経営をサポートする専門家の役割は何か?地域コミュニティ自身による住宅地経営はいかに可能なのか?それを支える公共の役割は何か?

 今回の特集では,各課題の先進的な取り組みの報告から,住宅地の経営的マネジメントの可能性を検討してみたい。

企画編集:九州大学大学院人間環境学研究院 都市・建築学部門 助教 柴田 建

 

魅力を創発する新しい住宅地のマネジメント
  九州大学大学院人間環境学研究院 都市・建築学部門 助教 柴田 建

泉北ニュータウンにおける住宅地持続の取り組み   
  堺市ニュータウン地域再生室 中川 健太

宗像市における住宅地持続の試み               
  宗像市秘書政策課 中村 博二

美しが丘3丁目に住んでカフェを経営:次世代郊外まちづくりから担い手のネットワークへ
  3丁目カフェオーナー 大野 承

まちにわ ひばりが丘:団地再生を通じた「街に和」づくりへ
  HITOTOWA INC.高村 和明

シェアタウン ボン・ジョーノ:タウンクリエーションで未来をつなぐ
  ストックデザインラボ 北嵜 剛司

地域資源としてケアが再構成する住宅地:住宅生協が開発した北須磨団地
  九州大学大学院人間環境学研究院学術協力研究員 橋田 竜兵

フィオーレ喜連川における賃貸集合住宅を起点にした住宅地経営
  フィオーレ喜連川管理組合 浅香 充宏/大河原 千晶
  FIORE DIGITAL 田中 翔

 

トピックス

平成29年度国際居住年記念事業の活動         
  一般社団法人日本住宅協会

 

広場

民家ペーパークラフトを活用した地域の住まい学習
  その1 住教育教材としての民家ペーパークラフトづくり
  山梨大学大学院総合研究部教育学域人間科学系 教授
   /山梨大学教育学部附属教育実践総合センター長 田中 勝

 

書評

まちを住みこなす−超高齢社会の居場所づくり
  NPOまちの縁側育くみ隊 代表理事 延藤 安弘