2013年3月号
特集／災害公営住宅は今
東日本大震災からはや2年が経つ今もなお、被災された多くの方々の仮設住宅での暮らしの長期化への懸念、また雇用や子どもたちの教育等人々の今後の暮らしを支えていくうえでの課題が依然、山積しています。こうした課題の解決に向けて、たゆまぬ努力を続けている多くの方々へ敬意を表します。
「災害公営住宅」とは公営住宅法第2条第2項に規定される公営住宅で、法第8条第1項の規定による国の補助を受けて建設又は買取りをした公営住宅等、激甚災害に対処するための特別の財政援助等に関する法律第22条第1項の規定を受けて建設又は買取りをした公営住宅等と定義されています。
災害公営住宅は被災者の方々の仮設住宅での不自由な生活を一日も早く終えるため、早い完成が望まれていますが、震災後２年を経過した時点においても、資材や人材の不足そして宅地造成が新たに必要となることによる用地の不足等の理由で難航していることが実態です。
災害公営住宅の建設場所と入居優先枠においては高齢者や障害者だけでなく、従前コミュニティへの配慮が強く求められています。このことは過去の災害復興の際の経験からよく知られているところですが、生活再建のためには、単に災害公営住宅が手当てされるだけでなく、従前のコミュニティの維持はもとより、恒久的な生活を営む上で必要最低限の施設を整える必要が求められています。
目標とした災害公営住宅の供給に向けては幾多の困難を超えなければならない状況の中、民間企業が建設した住宅と土地の一括買取りや借上げによる民間企業のノウハウやスピードを活用した事例をはじめ、地域の自立性や自発性が育まれるように、コミュニティの連携や人々の共助を念頭にした計画がなされ、今後の復興まちづくりのモデルとなるような共用空間や外部空間の充実に目を向けた取り組みが少しずつ結実しつつあります。
本特集では過去の被災からの復興に向けて供給されてきた災害公営住宅を振り返り、改めて教訓を得るとともに、東日本大震災からの復興に向け、英知を結集して取り組まれている災害公営住宅の取組みをご紹介いただく機会と考えました。公営住宅の新たな役割として、こうした取り組みや知見を共有することは今日の全国共通の課題である、少子高齢そして人口減少社会の住まい方を考えるうえで大きな示唆を与えてくれるものと考えます。
企画・編集 東京大学大学院工学系研究科建築学専攻准教授 大月 敏雄
東日本大震災をめぐる重ね合わせの「住宅」政策 ‐ハイブリット型の計画論‐
東京大学大学院工学系研究科建築学専攻准教授 大月 敏雄氏
中越地震における罹災者公営住宅の建設と運営
長岡造形大学建築・環境デザイン学科准教授 澤田 雅浩氏
北海道奥尻島における津波災害からの災害公営住宅
地方独立行政法人北海道立総合研究機構 建築研究本部総務部性能評価課長 南 慎一氏
阪神・淡路大震災の災害公営住宅
神戸山手大学 小林 郁雄氏
石東・都市環境研究室 石東 直子氏
玄界島震災復興事業における住宅建設を振り返って
株式会社醇建築まちづくり研究所 牧 敦司氏
公的機関による住宅再建支援をどう考えるのか ‐支援策の変遷と巨大災害のリスク‐
京都大学防災研究所巨大災害研究センター准教授 牧 紀男氏
災害公営住宅の供給による地域の振興に向けて
国土交通省住宅局住宅総合整備課企画・審査係長 中林 幹夫氏
岩手県における災害公営住宅の取組み
岩手県県土整備部建築住宅課 営繕課長 吉田 壽仁氏
東日本大震災からの復興・災害公営住宅の取組み
宮城県土木部住宅課・復興住宅整備室
福島県における災害公営住宅の取組み
福島県土木部建築住宅課 主任建築技師 綿谷 彰夫氏
ＵＲ都市機構における災害公営住宅の取組み
独立行政法人都市再生機構震災復興支援室
被災市町村における状況‐岩手県及び宮城県での災害公営住宅整備に係る調査への参画を通じて‐
独立行政法人建築研究所住宅・都市研究グループ 米野 史健氏
静岡県における災害公営住宅の整備に向けた取り組みについて
静岡県健康福祉部障害者政策課主任 臼井 公一氏
宮城県石巻市における災害公営住宅整備に関する取り組みについて
石巻市震災復興部復興住宅課 技術主査
(兵庫県県土整備部住宅建築局営繕課) 永田 佳幸氏
被災地の復興を支える「陸前高田市丸ごと支援」
名古屋市住宅都市局都市計画課 阪野 武郎氏
広場
ドイツの住宅供給を巡る最近の動向 ‐住宅ストックの大型売買（その１）‐
滋賀県立大学教授 水原 渉氏
住宅だより海外編
‐国際居住年記念基金事業 海外の居住環境改善活動報告‐安心して暮らしてもらうために・・・（家屋の改築で国際貢献）
NPO法人れんげ国際ボランティア会 事務局長 久家 誠司氏