2013年7月号
特集/エネルギーで繋がるハウジング
温暖化などの環境問題への対応の必要性から、低炭素・省エネルギー社会への転換が求められて久しい。しかし、これまでの対策の柱は産業部門や大規模な開発のサステイナビリティ向上であったが、高い環境水準の目標を達するためには、民間部門や個々の住宅設備、ひいては人々の「住まい方」まで踏み込んで考え直さなくてはならない。
東日本大震災による原発事故は、この方向に大きな影響を及ぼした。低炭素化の側面から前提となっていた原発の活用だが、今後は大きく依存することはありえない。必然的に再生可能エネルギーへの転換を一層進めなくてはならないが、その課題である安定性の確保には、生成側だけでなく利用側にも制御技術が必要である。つまり住まい手が地域単位で繋がり、エネルギーを融通し合う仕組みと技術が必要となっており、各方面で開発中である。本特集では、まず住宅技術の先駆的事例から現時点の到達点と課題を見る。
しかし技術開発は進んでも、それを実際に普及させる社会的なシステムについては未だ議論の余地が大きい。また実際に地域のエネルギーマネジメントシステムが導入されたとして、その後にシステムの維持管理という課題が控えている。ある意味新たに発生する「コモン」を、地域は適切に維持・管理・更新を進めていけるのか。本特集の第二の視点はこれらの問題点について考えるものである。
企画・編集:横浜市立大学国際総合科学部国際都市学系准教授 中西 正彦
エネルギーを巡る状況と住宅に関わる論点
横浜市立大学国際総合科学部国際都市学系准教授 中西 正彦氏
磯子スマートハウス実証実験にみる住まい方
東京ガス(株)スマエネ推進部スマエネ事業企画G 榎本 奈津子氏
持続可能な住民事業者一体型エコ住宅街区の形成〜エコライフスクエア三島での取組み〜
静岡ガス企画部エネルギー・環境戦略担当マネージャー 中井 俊裕氏
スマートタウンにおける住まい方と地域エネルギー
パナソニック株式会社エコソリューションズ社マーケティング本部 戦略企画室宣伝企画グループ 西川 弘記氏
環境モデル都市・つくば「つくば環境スタイル“SMILe”」の挑戦
〜市民、企業、大学、研究機関、行政が一体となった「オールつくば」の取組〜
つくば市環境生活部長 山王 一郎氏
共同溝による水素供給実験とユニットハウスにおけるエネルギー技術
国土交通省国土技術政策総合研究所環境・設備基準研究室長 足永 靖信氏
「飯田市再生可能エネルギーの導入による持続可能な地域づくりに関する条例」と市民による再生可能エネルギー事業の展開
株式会社エックス都市研究所サスティナブルデザイングループ 長谷川 隆三氏
面的なエネルギーのネットワークにおける政策的な課題
千葉大学大学院工学研究科建築・都市科学専攻 教授 村木 美貴氏
地域エネルギーシステムとしての地域冷暖房の成果と今後の課題・展望
横浜国立大学大学院都市イノベーション研究院 准教授 吉田 聡氏
広場
平成24年度 国土交通白書の概要
国土交通省総合政策局政策課政策調査室
大規模郊外型住宅団地問題への行政対応の方法論 ‐ある試みを通して見えてきたもの‐
日本大学理工学部まちづくり工学科教授(前福山市政策顧問) 高村 義晴氏
住宅だより海外編
ウズベキスタンの国際会議に出席して
国土交通省住宅局住宅生産課建築技術政策分析官 山下 浩一氏
住宅関係功労者表彰
第65回通常総会報告について
書評
リファイニングが導く公共建築の未来
国土交通省住宅局住宅総合整備課公共住宅事業調整官 長谷川 貴彦氏