2013年11月号

特集/多世代居住

 居住を共にすることによってひとまとまりを形成した親族集団、あるいは血縁関係を基礎とした小規模な共同体を「家族」と捉え、主として農業を生業として生きてきた日本人にとって、濃密な人間関係による地域社会が形成されてきた。社会の最小単位である、そうした家族の在り方は厳しい自然の中で生きるうえで必然の姿だったといえるだろう。しかし、高度経済成長期以降の日本人のライフスタイルの変化は従来の家族像を大きく変えた。顕著なものとして、同居親族数の減少、共同体の力の衰退に伴う家族の基盤に変容が生じたことが挙げられる。多数の人口が農村から都市へ移動し、兄弟の数も減った。団塊の世代は既に高齢期となり、社会から孤立する者が増え、無縁社会という言葉まで生まれた。

 長引く不況の現代、若年世代にとっては将来の収入に対する不安を抱え、親世帯と同居の割合は年々、下がっているものの、子育てなどの生活面や経済面で親世代に頼り易く、かつ適度な距離を保てる「近居」や「隣居」の割合が上がり続けていることは多くの調査により明らかになっている。親の住居からスープの冷めない距離で緩やかに繋がりを持つ、目に見えない大家族と言ってもいいだろう。行き過ぎた核家族化の進行や未婚化、晩婚化といった若年世代の置かれた状況と介護等が必要となりつつある親世代の状況をお互いに補完しあうという意識のあらわれと捉え、こうした点は行政サイドとしても身近な人たちで互いに支え合ってもらうという点で行政コストの削減という観点からも歓迎される向きがあるだろう。

 本特集では多くの異なる世代による近居、隣居の実態に関する調査研究や既に取り組まれている事例等を紹介することにより、これからの住宅政策の一つのメニューとして推進されることを期待するものである。

企画・編集 東京大学大学院工学研究科建築学専攻准教授 大月 敏雄

 

 

新・新人類と近居
  東京大学大学院工学系研究科建築学専攻 准教授 大月 敏雄氏

高齢者支援の視点から見たサポート居住と準近居の現状と今後の展望
  鳴門教育大学大学院学校教育研究科 教授 金 貞均氏

ネットワーク居住からみた多世代・多世帯居住の実態
  九州産業大学工学部住居・インテリア設計学科 教授 上和田 茂氏

茨城県桜川市における多世代近居隣居の実態とそれを踏まえた新たなハウジングの計画
  桜川市建設部都市整備課 主任
  東京大学大学院工学系研究科建築学専攻 博士課程 軽部 徹氏

神奈川県における多世代近居のまちづくりの推進について
  神奈川県県土整備局建築住宅部住宅計画課

神戸市における近居・同居支援の取り組み
  神戸市都市計画総局住宅部住宅政策課住宅計画係長 鷲尾 真弓氏

子育て世帯の郊外モデル団地への住み替え支援
  四日市市都市整備部都市計画課政策グループ 課付き主幹 戸本 直弥氏

親元近居支援事業の取り組みについて
  品川区都市環境事業部都市計画課住宅運営担当

二世帯から「2.5世帯住宅」へと至る都市型多世代居住への取り組み
  旭化成ホームズ株式会社二世帯住宅研究所長 松本 吉彦氏

 

トピックス

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 国際居住年記念事業運営委員会事務局

 

住宅だより海外編

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