2014年3月号
特集/東日本大震災から3年
平成23年3月11日、過去に例をみない規模の大地震とそれに伴う津波により東北地方3県をはじめとする広範囲に被害をもたらした、東日本大震災からはや3年の月日が流れました。今日もなお、多くの方が仮設住宅での生活を余儀なくされ、また福島県では原子力発電所の事故による放射能汚染により、住み慣れた故郷から避難せざるを得ない方々がおられます。
平成25年11月末現在、復興庁によると自治体が整備した集団移転先の宅地や災害公営住宅の戸数の総計画戸数に対する割合は数パーセントにとどまることが公表されています。3年を経てもなお、この数字が低い、と単に割り切れるものでしょうか。折角、整備した災害公営住宅に入居しない、できない、あるいは街を離れた人々は諸般の事情で再び故郷に戻らない、という一方で被災者が民間分譲地などを自力で確保し、住宅を再建するケースが増えているという現実は被災後のまちづくりの青写真を描くことが如何に難しいか、現場でご苦労されている関係者の皆様に深甚の思いを新たにします。今般の大震災による被災地域は広範囲かつ、複雑な地形の沿岸地域に及んでいることから、公有地だけでは用地が確保できない、資材の高騰や人材の確保が難しい、そして高齢化率が高い過疎地が多い、という過去の災害復興の際の経験がそのまま生かせないといった特殊性をもっていることを考えれば、前述の割合はむしろ、今後の復興に向けてようやく萌芽した、というポジティブな捉え方として考えたいところです。
今後、我が国は人口が縮小する方向に向かい、それによって町も縮退せざるを得ない社会を迎えることになります。被災地の復興に向けてこれまで取り組まれてきたことから、これからのまちのあり方や住まい方を考えるうえで多くの知見が得られるものと考えられます。
本特集においては、次世代に亘って震災の記憶を風化させないという思いを新たに、発災から3年を経た今、この1年の取組みと今後の展望について、自治体関係者はじめ、事業に携わった方々より、既に完了した事業、あるいは継続中の事業についてその取組みを報告いただく機会としました。
企画・編集:東京大学大学院工学研究科建築学専攻准教授 大月 敏雄
復興の加速化に向けたこの一年の取り組み
国土交通省住宅局住宅総合整備課
平成25年における災害公営住宅の整備状況等について
伊藤 勇喜
宮城県における災害公営住宅のこの一年の取り組み及び今後の展望
宮城県土木部復興住宅整備室
宮城県における応急仮設住宅のこの一年の取組
宮城県保健福祉部震災援護室仮設住宅調整第一班
この一年における福島県の東日本大震災への対応の取り組み
福島県土木部建築住宅課/建築指導課
災害公営住宅第一号 相馬井戸端長屋とその可能性
伊東 充幸
新地町における防災集団移転等の取組み
鴇田 芳文/江田 隆三
福島県における災害公営住宅の取組みと今後の課題
長谷川 洋
広場
足立区営住宅更新(建替え・集約)の取組み〜50年代公営住宅の再編成〜
島田 和生
まちなか居住に寄与する借上型市営住宅制度の動向と評価 〜全国の基本動向と山口市の調査を通して〜
熊野 稔/中野 莉沙/樋口 秀