2015年1月号

特集/地域で最期を受け止める
〜終わりの暮らしをリデザインする〜

 住み慣れた住宅や地域で最期を迎えることは、いつの間にか私たちにとって絵空事のようになりつつある。高度成長期以前には家庭やコミュニティの中で支えられていた老いや死が、いつの間にか身近な空間から追い出され、現代社会では地域のなかの日々の生活の延長線上に自分の最期を描くことは困難になっている。
 そうした中で、近年、改めて地域全体で人生の最期の時をケアしてゆこうという動きが芽生えている。それは心ある医療の提供者たちによる人間の尊厳を大切にしようとする努力と、国や行政が高齢化社会において必要になる介護や医療にかかる莫大な社会的コストを抑制しようとする動きが、現時点でたまたま一致したことによるものだとも言える。
 少子高齢化、人口減少という現実は、こうした全く異なる2つのベクトルが、葛藤しながらも社会の中に確実に根付いてゆく背景になっている。老いや死を自宅や地域でどう受け止めるかについて、その概念や制度が大きく変容しようとしている現時点において、「地域で最期を受け止める」ということをテーマに終わりの暮らし方について改めて考え、その意義や限界を示しながら、新たに地域で高齢者を支えてゆくための制度や空間のあり方、現状の課題について考察を深めてゆきたい。

 

企画編集:千葉大学大学院園芸学研究科 准教授 秋田 典子

 

<第一部 地域で最期を受け止める>

地域で最期を受け止める
 千葉大学大学院園芸学研究科 准教授 秋田 典子

病院でもなく、ホスピスでもなく、家で、死ぬということ
 在宅療養支援診療所 ケアタウン小平クリニック 院長 山崎 章郎

最後まで自宅に住み続ける
 東京大学高齢社会総合研究機構(IOG)特任助教 西野 亜希子

がん患者のこころの支援と環境デザイン
 首都大学東京都市環境学部建築都市コース 教授 竹宮 健司

 

<第二部 地域で生を受け止める>

地域包括ケアシステムの理念と実践
 厚生労働省老健局総務課 企画法令係長 山口 健太

老後生活の地域間格差 ‐現状と課題‐
 立教大学コミュニティ福祉学部コミュニティ福祉学科 准教授 長倉 真寿美

地域での看取り梼原町における取り組み
 ‐地域包括ケアとは「住み慣れた地域で死ねてよかった」と言われる町づくり‐
  高知県梼原(ゆすはら)町立国民健康保険梼原病院長 内田 望

新しい都市像としての「ヘルスケアシティ」構想
 ヘルスケアシティ研究会・座長、工学院大学建築学部・教授 野澤 康

 

広場

木造住宅および木材利用に関する意識の地域間比較 アンケート調査の単純集計結果報告から
 京都大学大学院農学研究科博士後期課程 中川 宏治

 

住宅だより海外編 ‐国際居住年記念事業 海外の居住環境改善活動報告‐

エチオピアの乾いた大地に木を植える。まちづくり活動と共に歩んだ植林事業
 フー太郎の森基金 前エチオピア事務所長 藤村 健司