2015年11月号

特集/居住支援協議会

 少子高齢社会の急速な進展によって、高齢単身世帯等の増加が見込まれる中、入居中の事故や家賃滞納への不安から高齢者が民間賃貸住宅への入居を敬遠されるケースが目立ってきている。一方で、高齢であることを理由に入居を拒まない民間賃貸住宅も数多くあり、こうした住宅の情報を広く提供していくことが求められている。
 住宅の確保に向けた配慮を要する人々は、高齢者のみならず、低額所得者や被災者、障害者、子どもを育成する家庭、さらにはニューカマーと呼ばれる新たな定住外国人であることもあろう。こうした人々に対し、官民協働で住宅と福祉の両面から住み慣れた地域で安心して暮らせる住まいの確保に向けた取組みの推進が求められている。
  こうした背景から地方公共団体、宅地建物取引業者、賃貸住宅を管理する事業を行う人々が連携し、居住支援協議会を組織することができることが、「住宅確保要配慮者に対する賃貸住宅の供給の促進に関する法律」、いわゆる「住宅セーフティネット法」の第10条第1項において規定されて久しい。
 ところが、居住支援協議会は必ずしも所期の働きを全うして、人々に認識され、地域的広がりの中で様々に生じるセーフティネットを形成しつつあるとは言いがたい。次年度は、第2期目の住生活基本計画が始まる予定だが、その準備的議論の中でも、こうした地域的セーフティネット形成への期待が、居住支援協議会に寄せられているのも事実である。
 さらに、もし居住支援協議会が地域的な議論を真剣に行い、不動産業界、福祉業界とより連携を深めれば、個別の敷地単位のハウジングを超えた地域空間マネジメントとしてのハウジングが議論されるだろうし、地域包括支援体制に対して住宅はどういう構えでいればいいのかといった、切実な議論にも参加できるであろう。
 本特集では、すでにある居住支援協議会の取組みや今後の期待についてご紹介いただくことにより、居住支援協議会の活動が広く周知されることに資する機会としたい。

 

企画編集:東京大学大学院工学系研究科建築学専攻 教授 大月 敏雄

 

住宅政策の展開と居住支援協議会への期待
 千葉大学大学院工学研究科建築・都市科学専攻 教授 小林 秀樹

居住支援協議会への支援の取組
  国土交通省住宅局安心居住推進課

神奈川県居住支援協議会について
  神奈川県県土整備局建築住宅部住宅計画課 牧野 勉

京都市居住支援協議会のこれまでの取組と今後の展開について
 京都市都市計画局まち再生・創造推進室空き家対策課長 寺澤 昌人

Osakaあんしん住まい推進協議会の取組みについて
 大阪府住宅まちづくり部都市居住課 尾崎 輪香子

神戸市における居住支援協議会のこれまでの取組と今後の展開について
 神戸市住宅都市局住宅部住宅政策課

鳥取県居住支援協議会の取組について
 鳥取県生活環境部くらしの安心局住まいまちづくり課

福岡市における居住支援協議会のこれまでの取組と今後について
 福岡市住宅都市局住宅部住宅計画課居住支援係長 岳本 美保

 

トピックス

平成27年度国際居住年記念事業の活動
  一般社団法人日本住宅協会

 

広場

カナダ・トロント市の公共住宅団地の再生事業と社会的包摂の実践
 〜リージェント・パーク団地の取り組み〜 筑波大学システム情報系 准教授 藤井 さやか

 

住宅だより海外編

‐国際居住年記念事業 海外の居住環境改善活動報告‐
 防災と命を守る家:国際NGOハビタットの取組みを事例に
  特定非営利活動法人ハビタット・フォー・ヒューマニティ・ジャパン
   支援事業部マネージャー 山本 真太郎

 

書評

現代日本ハウジング史1914〜2006
  NPO法人まちの縁側育み隊 代表理事 延藤 安弘