2018年1月号

まちを元気にするローカル不動産業

 成長社会においては各種事業が自ずと回っていく状況が期待できたが、成熟社会となった今、事業をいかに回していくか、努力と工夫がいっそう問われている。まちづくりの領域においても、特徴ある開発や活用によって、住まいとまちを回していくことが重要である。つまりまちづくりにおける不動産流通業的な視点の必要性が高まっているといえよう。
 一方、住まい手の立場から見ると、住まいを購入し住み続けることは多額の資金を要するひとつの事業である。適切に住まいを取得し、ライフステージに合わせて住まいに手を入れ、場合によっては住み替えていくことは、つまり不動産業的事業であるが、その際には専門業としての不動産業者の介在が欠かせない。
 また、近年の課題である、リノベーション、住み替え支援を業として回そうとすれば、やはりすなわち不動産流通業的な事業となり、そこに専門性が存在する。実際に、人口減少・地域衰退の時代に危機感を持ち、自らが活動する地域を活性化することが自分たちの将来の地盤を確固たるものにできるとの自覚を持ち、「不動産業こそがまちづくりを行える」と様々なまちづくり活動に乗り出すローカル不動産業者も見られるようになってきた。
 本特集は、地域に根差した不動産事業者によるまちづくり活動や住まい方の支援が「まちを元気にする」可能性に着目し、その萌芽的活動と今後への期待を示すものとする。

 

企画編集:横浜市立大学国際総合科学部国際都市学系 准教授 中西正彦


地域居住・まちづくりにおけるローカル不動産業への期待と課題
 横浜市立大学国際総合科学部国際都市学系 准教授 中西正彦

遊休化した建築ストックの活用:不動産学の観点から
 明海大学不動産学部 教授 中城康彦

空き家を利用してまちを元気にするローカル不動産業
 横浜市立大学国際総合科学部 教授 齊藤広子

ビンテージビルでひとがつながるまちづくり      
  株式会社スペースRデザイン 梶原あき

多様なまちづくり活動を展開するローカル不動産業に見る活動の要件
 横浜市立大学国際総合科学部国際都市学系 准教授 中西正彦

郊外を元気にするローカルビジネスと都市計画
 鞄s市環境研究所 計画グループ主任研究員 高鍋 剛

 

広場

不動産市場の活性化のための制度課題と方策
 明石市都市整備部建築室開発審査課 指導係長 京橋 健一郎