2018年9月号

どうする?!実家・親の家

 今日の超高齢社会、人口減少・ストック余剰時代において、多くの人が高齢の「親の家をどうするか」という問題を抱えているのではないだろうか。住宅双六が一本道でなくなって久しいが、特にかつては上がりだったはずの郊外戸建持家は「終の棲家」になるとは限らず、長い「人生後半の住まい」を求める第二の双六が再び始まるとも言える。子世代にとっては、自らの住宅取得と親の家の問題が重なることも多い。
 ちなみに、東北大学による「ネットワーク居住」の研究によれば、人々が家族と捉える範囲は平均8人前後で、その家族は平均して3つの住宅に分散居住しているという(近江隆「人口減少時代を迎える地方都市居住の課題」〜2003年都市住宅学会大会第11回学術講演会パネルディスカッション資料掲載〜)。統計上は2003年時点で日本の世帯人員は平均2.65人、一世帯当たりの住宅数は1.14戸であり、この両者の数字の大きなギャップは極めて衝撃的である。住宅政策は後者の統計数字に基づいて進められているが、国民生活は前者の実態、すなわち現に同居している範囲にとどまらず、(親も含めた)広義の家族全体で複数の住宅・施設を関連させた居住システムの中にいるのであろう。
 このような状況の下で、親子世帯が同居・隣居・近居・別居するか、住宅を建替・リフォーム・賃貸・売却するか、介護は在宅・通所・サ高住・施設のどれを選ぶかなど、自分と両親(義理の親も)の両方を考えると選択肢は非常に多く、しかもいずれも専門知識が必要で、この多体問題に適切な解を見出すことはかなり難しい。立地条件や住戸規模等の基本的制約に加え、耐震・省エネ(健康)・バリアフリー等の性能向上も課題である。そして、資産活用や生活費確保の視点も大きいし、やがては相続・空き家化に至る可能性も高い。個人的な問題ゆえに行政施策の対象ともならず、結論が不透明すぎて住宅市場でも扱えない。誰がどう手助けすればいいのだろうか。空き家予備群の発生を抑止し、ストック有効活用による居住水準の向上に資するための方策を考えたい。
 本特集では、この問題に対する総合的分析に続き、先駆的に取り組んでいる公益法人、民間企業、市民団体の試みを紹介する。あわせて、関係する各分野の専門家の知見をいただき、最後に行政機関より関連する施策を紹介いただいた。誰もが直面するこの複雑な問題に対して明快な「解法のテクニック」が見いだされることを願うものである。

 

企画編集:株式会社日本建築住宅センター/常務取締役・住生活事業部長 大竹 亮

実家のご近所継承          
 東京大学大学院工学系研究科建築学専攻教授 大月 敏雄

地方都市の既存住宅地における家・土地の更新実態について−鳥取県鳥取市を事例に−
 東京大学大学院工学系研究科 坂本 慧介

新たな相談体制「住生活ナビ」の試行について
 一般財団法人住まいづくりナビセンター事務局長・住まいナビグループ長 青木 千枝子

不動産のプロが導く、実家活用術〜皆が幸せになるための道標〜
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備えあれば憂いなし!家族で取り組む実家の片づけ〜実家片づけアドバイザー〜                                 
 一般社団法人実家片づけ整理協会 代表理事 渡部 亜矢

ライフプランニングで「終のすみか」を考える 
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実家・親の家について、一人一人が最適解を見出すために
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“すままちプラザ”を拠点とした住情報交流と空き家相談
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 ミサワホーム潟Jスタマーサポート推進部オーナーサポート企画課 長石 正章

親の家どうする?オヤイエラボの取り組み 
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既存住宅流通・リフォーム市場の活性化に向けた施策の状況
 〜インスペクション・安心R住宅制度等を中心に〜
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