2021年9月号
災害に対する事前の備え(関東大震災100年〜その1)
1923年の関東大震災発生から、100年目が近づいている。
日本列島は地震、台風などによる自然災害にしばしば見舞われ、防災対策は重要な社会的課題である。特に関東大震災(1923年)の市街地大火、伊勢湾台風(1954年)の広域的浸水、阪神淡路大震災(1995年)の建物倒壊、東日本大震災(2011年)の大規模津波では、甚大な被害がもたらされた。そこで本誌では、2023年9月の関東大震災100年に向けて、防災に関する特集を3回にわたって組むこととする。その構成は次のように予定している。
・2021年9月号:第1回「災害に対する事前の備え」
・2022年9月号:第2回「減災に向けた居住環境の改善」
・2023年9月号:第3回「被災後の生活継続に向けた新しい取組」
第1回では、災害発生予測と被害想定をもとにした建築住宅分野の計画的な防災対策について概括する。第2回では、住生活の向上が減災につながるという観点から、居住環境の改善を軸にした対策を採り上げる。第3回では、災害発生後に被災者の生活の継続を支援するための新しい対策を探ってみたい。
住宅は人間生活に必須の中心的な場であり、災害への事前の備えは非常に重要である。今回の第1回特集では、頻発する諸災害に対応し、建築住宅分野が果たすべき責務と役割をできる限り体系的に紹介した。名古屋大学の福和先生に概論、兵庫県立大学の室崎先生にまとめと課題をご寄稿いただき、国土交通省には住宅・建築分野の防災対策の施策全般について総合的にご説明いただいた。そして、各種災害分野に対する先進的な取組事例について、地方公共団体や関係する民間機関の方にご紹介いただき、それらについて東京大学の廣井先生に体系的に整理していただいた。
なお、本特集の企画は、本誌編集アドバイザーの樋野先生(東京大学)と大竹に加え、専門家として廣井先生にもご参加いただき、3名で担当した。また、国土交通省建築物事故調査・防災対策室には、全般にわたって貴重な助言協力をいただき、深く感謝申し上げたい。
災害には想定外の要素もあるが、科学的に原因を分析し事前に対策を推進することによって、確実に被害を減らすことが出来る。一方で日々生じるものではないし、対策には相当の費用や時間がかかることから、現実にはなかなか着手できない状況も見られる。したがって、計画的に取り組み、着実に推進することが何より必要であると考える。今回から毎年1回、計3回の特集が、住宅における防災対策に役立つことを切に願うものである。
企画編集:株式会社日本建築住宅センター専務取締役 大竹 亮
災害と住宅
名古屋大学減災連携研究センター教授 福和 伸夫
住宅・建築物の防災関連制度について〜新たな住生活基本計画に基づく取組等
国土交通省住宅局建築指導課建築物事故調査・防災対策室
事前防災対策の体系的整理とこれからの防災対策
東京大学大学院工学系研究科都市工学専攻教授 廣井 悠
高知県における住宅耐震化促進の取組
高知県土木部住宅課
東京都の防災都市づくりについて〜防災都市づくり推進計画と不燃化特区〜
東京都都市整備局市街地整備部防災都市づくり課
滋賀県流域治水条例に基づき指定する浸水警戒区域での建築制限と支援制度
滋賀県土木交通部流域政策局 山田 千尋
台風被害(風害)による瓦屋根被害への対策
一般社団法人全日本瓦工事業組合副理事長 足立 英明
新地町の復興における津波防災対策と地域エネルギーシステム
新地町都市計画課長 加藤 伸二
住まいとまちの水害対策
国立研究開発法人建築研究所主席研究監/東京大学大学院工学系研究科特定客員教授 木内 望
木材の長所を活かす防火技術開発(燃えしろ設計)
桜設計集団一級建築士事務所 安井 昇
高層住宅の長周期地震動対策と家具転倒防止対策
株式会社小堀鐸二研究所 鈴木 芳隆
エレベーターの地震対策
一般財団法人日本建築設備・昇降機センター 杉山 美樹
まとめと課題・・関東大震災に学ぶ事前の備えのあり方
公立大学法人兵庫県立大学減災復興政策研究科長 教授 室崎 益輝
特集を終えて
東京大学大学院工学系研究科都市工学専攻准教授 樋野 公宏
トピックス
令和3年度「住生活月間」について
住生活月間実行委員会事務局
令和3年度国際居住年記念賞等受賞者の公募について
一般社団法人日本住宅協会
広場
国土交通大学校小平本校におけるオンライン研修の取組について
国土交通大学校教授 金子 健