2019年11月号

民泊のいま(住宅宿泊事業法施行から1年)

 昨年6月に住宅宿泊事業法が施行されて1年が経過した。施行以前から、インターネットの上のマッチングビジネスの台頭により「民泊」は普及していたものの、既存の旅館業法でそれらを適切に運営させることができなかったためである。増加傾向にあるインバウンド観光客の宿泊場所を確保して経済活性化につなげたい、全国で増加する空き家の有効な活用先にしたいという国の目論見もあった。
 一方で、住環境を守りたい地域住民や、それに寄り添う自治体は不安を抱えていた。旅館業法の許可なく運営される「民泊」が、騒音やゴミ出しの問題から近隣トラブルに発展した事例、さらには犯罪の現場となった事例なども報道されていた。具体的な問題がなくても、閑静な住宅街にスーツケースを引いた「よそもの」が入り込んでくることに対する不安感もあった。こうした状況を受け、条例を制定して法に上乗せ、横出しする自治体も多く見られた。
 本特集は、「民泊」に対する議論が落ち着いてきたいま、住宅宿泊事業法や「民泊」に関する様々な情報を再整理するとともに、当初の目論見は達成されつつあるのか、地域住民の不安は的中してしまったのか、「民泊のいま」を切り取ることを目的とする。

 

企画編集:東京大学大学院工学系研究科都市工学専攻 准教授 樋野 公宏

 

 

「民泊」のいま
 東京大学大学院工学系研究科都市工学専攻 准教授 樋野 公宏

民泊問題が日本の観光に問いかけるもの〜民泊法施行1年に思う〜
 立教大学観光学部観光学科 教授 東 徹

住宅宿泊事業法施行から1年の法的概況(旅館業法も踏まえて)
 松田綜合法律事務所 パートナー弁護士  佐藤 康之

京都市における「民泊」に係るルールと現状〜法施行1年を経て〜
 京都市保健福祉局医療衛生推進室医務衛生課

大田区における特区民泊、住宅宿泊事業の取り組みと課題について
 大田区健康政策部生活衛生課環境衛生担当係長 伊藤 弘之

農村地域の民泊の背景と動向      
 筑波大学システム情報系社会工学域 准教授 山本 幸子

住宅宿泊事業法施行後のAirbnd Japanの取組        
 Airbnd Japan且キ行役員 長田 英和

 

広場

住みたくなる住宅地−住まいのまちなみコンクール−
 一般財団法人住宅生産振興財団事業部部長 松岡 俊一郎