2020年5月号

居住支援のかたち

 住生活基本法を巡る議論の中で、住宅のセーフイティネットをどう構築していくかが課題となり、住宅セーフティネット法が制定され、この改正によって「居住支援」というキーワードが、住宅政策上の新しい分野を開きつつある。
具体には、自治体ごとの居住支援協議会やその担い手としての居住支援法人が制度化され、実行に移されつつある。しかしまだ、全国的に見ると「居住支援」が具体的にはどのようなものかについては、百家争鳴の時期であり、体系だった居住支援業務というものの全体像は見えていない。ただ、新たにテーマ化し、対象化しなければならない社会的弱者は急激に多様化しつつあり、その課題を包摂する社会構築は急務である。
本特集では、現時点における「日本の居住支援のかたち」を概観することによって、今の居住支援の枠組みの全体像を俯瞰的に整理することを試みる。

 

企画編集:東京大学大学院工学系研究科建築学専攻 教授 大月 敏雄

 

居住支援政策を考える〜「住宅」政策から「居住」政策へ〜
 東京大学大学院工学系研究科建築学専攻 教授 大月 敏雄

居住支援のための住宅政策〜居住支援法人、居住支援協議会の現状〜
 国土交通省住宅局安心居住推進課課長補佐 嶋田 大輝

諸外国のホームレス概念と政策から居住支援を考える
 東京大学大学院工学系研究科建築学専攻 特別研究員 河西 奈緒

ホームレス支援の現場における居住支援     
 特定非営利活動法人 ほっとプラス 平田 真基

刑務所など施設退所者の居住支援-沖縄県NPO法人プロミスキーパーを例に-
 東京大学大学院工学系研究科建築学専攻学術支援専門職員 西野 亜希子

救護施設における居住支援の現状   
 東京大学大学院工学系研究科建築学専攻 准教授 松田 雄二

障害者グループホームにおける居住支援
 東京大学大学院工学系研究科建築学専攻 准教授 松田 雄二

母子世帯への居住支援の実態と課題          
 追手門学院大学地域創造学部 葛西 リサ

困難を抱える女性/生きづらさを抱える女子とDV被害者への居住支援のかたち
 建築工房匠屋 大崎 元

自然災害後の遠隔地避難者への居住支援 
 東京大学大学院工学系研究科建築学専攻博士課程/日本学術振興会特別研究員 須沢 栞
 もりおか復興支援センター生活相談支援員 外ノ 万里

多文化の住民が「ともに安心して暮らす」ための支援〜UR川口芝園団地における実践と考察〜
 芝園かけはしプロジェクト 圓山 王国