2022年1月号

公的住宅は子育て支援のために何ができるか

 1951年の公営住宅法制定によって始まった日本の公営住宅供給は,その当初から,子育て家族を主要な居住者と想定していた。特に,公営住宅標準設計51C型は,食事室兼台所(いわゆるダイニングキッチン)を導入することで,食寝分離とともに,夫婦と幼い子どもの就寝分離を実現したものである。12坪という狭小な間取りの中で合理的な子育て家族の暮らしを標準設計として実現することで,戦後の住宅難に時代に全国で公的住宅の効率的な大量供給を行ってきたのである。
 その後,高度経済成長期,オイルショックを経て量の時代から質の時代へ,そして住宅団地の新規開発からストックのマネジメントと再生へと社会的課題が変化する中で,子育て家族に対する公的住宅による支援のあり方も多様化してきた。
 対象となる入居者については,シングルペアレント,DV被害親子のシェルター,外国人家族など,それぞれ個別の困難を抱えている子育て家族への居住支援のあり方が問われている。また,特に地域の少子高齢化が深刻化している地方の自治体においては,子育て世帯のI・Uターン促進策として,様々なサービスや魅力を持った住まいの提供を公的住宅の枠の中で行っている。さらには,団地を囲む周辺地域もターゲットとして,地域での広域的な子育て支援の一環として公営住宅に施設等を併用する取り組みも増えてきた。
 本特集は,全国における多様な取り組みの事例を集め,現時点での成果と課題を整理することを目的に企画された。地域を次世代へと継承していくためにも,公営住宅にどのような子育て支援が可能なのか,今後の議論の土台となれば幸いである。

 

企画編集:大分大学理工学部創生工学科建築学コース准教授 柴田 建

 

共事としての子育て支援の場の形成‐UR賃貸住宅団地の事例から‐
 日本大学理工学部建築学科助教 井本 佐保里

国土交通省住宅局の子育て世帯向けの取組について
 〜住宅セーフティネットと子育て世帯の住環境〜 
  国土交通省住宅局

公的住宅は子育て支援のために何ができるか
 〜長野県における県営住宅の子育て世帯向けリノベーション事業〜
  長野県建設部建築住宅課公営住宅室

大分市営住宅における子育て世帯向けリノベーションの取組み
 大分市土木建築部住宅課工務担当班 川越 治代

「住みたい田舎1位」豊後高田市における公的住宅を活かした移住・子育て支援の取り組み
 大分大学理工学部創生工学科建築学コース准教授 柴田 建

府営住宅の空室を活用した小規模保育事業所について「RICホープ島本保育園」
 大阪府建築部住宅経営室経営管理課計画グループ 野口 万里花

築45年の公団住宅に「子どもカフェ」ができた atひのさと48
 〜小中学生が作る自分たちの居場所〜
  みどりtoゆかり日の里運営者((一社)Grandjour 代表理事) 吉武 麻子