2022年7月号

住宅と脱炭素社会

 2021年3月に閣議決定された住生活基本計画(全国計画)では、コロナ禍の影響を色濃く受けて、目標1として「「新たな日常」や DX の進展等に対応した新しい住まい方の実現」という目新しい項目が盛り込まれたが、都道府県、市町村レベルで、これに具体的にどのように対応していくかについてはまだ、しっかりした研究をベースにした確たるエビデンス やロジックが形成されているわけではないので、ある意味手探りで、いろんな知恵を全国的に共有しながら進めていくしかない、というところが現実であろう。
 これに対して、目標6では「脱炭素社会に向けた住宅循環システムの構築と良質な住宅ストックの形成」が掲げられ、日本の住宅政策において長らく課題となってきたこの問題に、 住宅政策としても具体性を持って取り組む姿勢が示された。この背景には、2020年10 月、当時の菅総理が「2050 年カーボンニュートラル、脱炭素社会の実現を目指す」ことを宣言したことが挙げられる。さらに、2021 年 4月に、菅総理が「2030年度に、温室効果ガスを2023 年度から46%削減することを目指す。さらに、50%の高みに向けて、挑戦を続けていく」という、具体的な数値を伴う宣言がなされた。これを受けて、2021年4月から 8月にかけて、「脱炭素社会に向けた住宅・建築物の省エネ対策等のあり方検討会」が、経済産業省・国土交通省・環境省の共同によって実施され、すでに検討結果が示されている。  
 本特集では、国の基本計画を受けて現在都道府県の住生活基本計画が示され、これから具体の施策に踏み込んでいくことになるが、具体にはどう取り組めばいいか、なかなかわからない「住宅と脱炭素社会」の考え方と具体策に関する知識を読者と共有したい。

 

企画編集:東京大学大学院工学系研究科建築学専攻 教授 大月 敏雄

 

脱炭素社会と住宅               
 早稲田大学創造理工学部建築学科 教授 田辺 新一

住宅分野における省エネ対策の推進について        
 国土交通省住宅局参事官(建築企画担当)付

カーボンニュートラル実現に向けた住宅の省エネルギー化等について
 経済産業省資源エネルギー庁省エネルギー課

第7次東京都住宅マスタープランにおける脱炭素に向けた取組
 国土交通省大臣官房付(元東京都住宅政策本部住宅政策担当部長) 武井 利行

住宅における脱炭素をめぐる世界からの要請
 慶応義塾大学理工学部教授/日本建築学会前副会長・SDGs対策推進特別調査委員会委員長
  伊香賀 俊治

解説:サステナブル建築物等先導事業の概要と最近の状況
 国立研究開発法人建築研究所環境研究グループ長 桑沢 保夫

住宅の省エネ化と健康                
 近畿大学建築学部建築学科 教授 岩前 篤

ZEH住宅の展開と課題
 芝浦工業大学建築学部長・教授 秋元 孝之

脱炭素に向けた地域の住宅供給          
 エコワークス株式会社代表取締役社長 小山 貴史

ゼロ・カーボン先進街区における取り組み 福岡県北九州市小倉北区城野地区の紹介
 北九州市立大学経済学部 教授 牛房 義明

 

令和3年度住宅関係功労者表彰                     
 一般社団法人日本住宅協会

第74回通常総会報告                         
 一般社団法人日本住宅協会