2024年5月号

住宅団地の外国人集住

 世界の移民・難民は増加の一途をたどっている。COVID-19の蔓延による一時的な停滞はあったものの、各地で発生している災害や戦争、不安定な社会情勢により、今後も移民・難民の増加が見込まれている。日本でも長期滞在する外国人人口は増加を続けており、2023年12月末には341万人以上となり、過去最高を記録している。来日する外国人の居住地の調査によると、近年、住宅団地に住む外国人が増えている。集住している外国人の国籍や文化的背景を反映して、団地内外にエスニック料理の飲食店や海外食品・雑貨を扱う店舗が集まってエスニックタウン化し、新たな名所となる団地も出てきている。しかし、日本の文化・生活習慣と異なる行動様式に起因して、ごみ捨て、匂い、騒音、共用部の利用方法などがトラブルとなり、対応に苦慮している団地もある。
 外国人が集まって住んでいるといっても、集住の状況は一様ではない。団地ごとに、集まっている外国人の国籍、年齢、家族形態、来日時期、来日理由、就労形態、在住期間が異なり、多様な生活が営まれている。特定の国籍の外国人が多い団地もあれば、様々な国からやってきた外国人が混住している団地もあり、団地ごとに少しずつ異なった生活が展開されている。そういった特徴を丁寧に読み解いていくことで、外国人集住を団地の新たな魅力にしていける可能性がある。居住者の高齢化や空き家増加が課題となっている住宅団地にとって、外国人の集住は悩みではなく、団地の活性化につなげる大きなチャンスにもできるだろう。
 本特集は、大きく3つの特集で構成している。はじめに日本の外国人居住の現状を概括し、住宅団地への外国人集住の状況を把握する。次に外国人が集住している住宅団地の事例を紹介する。最後に外国人集住への対応について、国内と海外(ドイツ・フランス)の取り組みをみる。この特集を通じて、外国人の集住実態への理解を深めるとともに、外国人集住団地での様々な取り組みから、増加する外国人住民との共生について考えていきたい。

 

企画編集:筑波大学システム情報系 准教授 藤井 さやか

 

増加する外国人の受け皿としての住宅団地
 筑波大学システム情報系 准教授 藤井 さやか 

国勢調査分析からみる外国人集住団地の実態
 筑波大学システム情報系 准教授 藤井 さやか
 潟Lーマン 王 爽 

京都市東松ノ木市営住宅
 NPO東九条まちづくりサポートセンター まめもやし 村木 美都子
 (聞き手 筑波大学システム情報系 准教授 藤井 さやか) 

外国籍住民集住団地の現状〜神奈川県営いちょう団地について
 明治学院大学教養教育センター 准教授 長谷部 美佳 

UR川口芝園団地の現状〜接点づくりから広がるまちづくり〜
 國學院大學観光まちづくり学部 助手 圓山 王国 

まちの課題にポジティブなアクション♪
 NPO法人霧が丘ぷらっとほーむ 根岸 あすみ 

「多文化共生」に向けた課題と展望〜神奈川県営住宅の事例から〜
 横浜市立大学国際教養学部都市社会文化研究科 教授 坪谷 美欧子 

UR賃貸住宅における外国人居住者との共生について
 独立行政法人都市再生機構 住宅経営部業務収納課 白石 崇 

ドイツにおける難民等の受け入れ政策
 東京大学大学院工学系研究科 王 瑛玉
 東京大学大学院工学系研究科建築学専攻 教授 大月 敏雄 

フランスの郊外団地と移民集住の背景、現在の課題
 同志社大学社会学部 教授 森 千香子 

 

トピックス 

令和5年度国際居住年記念事業「国際居住年記念賞」の受賞者の決定について
 一般社団法人日本住宅協会