2024年9月号

マンションのサステナビリティ

 分譲マンションのストック数は約700万戸に達し、国民の1割以上が分譲マンションに居住していると推定されている。またマンション居住者(区分所有者)は、「いずれは住み替える」のではなく「永住する」という意識で居住している割合が年々高くなっている。
 このように外形的には「終の棲家」の主要な居住形態として定着しているマンションであるが、「建物」と「居住者」の「2つの老い」が進行する中で、適切に維持管理がなされておらず、地域社会の大きな問題となりかねないマンションも存在することを忘れてはならない。例えば、高経年のマンションでは、管理費や修繕積立金が十分に集められておらず、維持管理や修繕が適切に実施されていないケースや、所在不明住戸や空き家の増加等によってそもそも管理組合が機能していないケースが少なからず存在する。また、管理組合が適切に運営されていても、所在等不明区分所有者の存在により合意形成がうまくいかず、適正な管理や再生に向けた動きが制限されているケースがあることは想像に難くない。このほか、修繕工事の発注者である管理組合の利益と相反する立場に立つ設計コンサルタントの存在や、維持管理に関する情報が不足したままで中古マンションの市場が拡大していることなど、解決すべき課題が山積している。これらのことを踏まえると、マンションという居住形態について、サステナビリティ(持続可能性)が十分に考慮されないままで社会に定着してきたという見方もできる。
 こうした中、マンションの管理・再生に関する様々な仕組みの見直しに向けた動きが具体化しようとしている他、現行の仕組みを前提として運用上の工夫によって状況の改善を図る事例も出てきている。
 本特集では、最新の政策動向や先進事例を幅広く紹介し、マンションのサステナビリティを確保するための道筋を探ることとした。
 特集1では、横浜市立大学の齊藤教授に、マンションの管理・再生の現状と課題について、地方公共団体への期待も含めてご寄稿いただいた。また特集2では、国土交通省住宅局参事官から、マンション政策の最新動向について、区分所有法制の見直しの動向も含めて解説していただいた。
 特集3-1〜3-8は、マンションの適正管理に関する動きであり、地方公共団体や団体等から誘導・支援等の最新状況について報告していただいた他、京都橘大学の鈴木教授から、管理状態が良好な高経年マンションの特徴等について報告していただいた。
 特集4-1〜4-4は、マンションの再生に関する動きであり、改善・建替等に取り組まれている事業者等から、最新の取組状況等について報告していただいた。
 最後に特集5では、国土交通省国土技術政策総合研究所の長谷川部長に、特集全体を通じたまとめと課題についてご寄稿いただいた。
 本特集が、マンションに関わる関係者が新たな取組を行おうとする際の一助となれば幸いである。

 

企画編集:本誌編集アドヴァイザー 田中 敬三
(日本住宅パネル工業協同組合理事長)

 

特集1 マンションの管理・再生の現状と課題
 〜マンションを地域財に、そして地方公共団体への期待 
  横浜市立大学国際教養学部 教授 齊藤 広子

特集2 マンション政策の最新動向    
 国土交通省住宅局参事官(マンション・賃貸住宅担当)

特集3-1 堺市のマンション管理計画認定制度(独自基準設定)について
 堺市建築都市局住宅部住宅施策推進課

特集3-2 名古屋市における「マンションの管理の適正化の推進に関する条例」に基づく取り組みについて
 名古屋市住宅都市局住宅部住宅企画課長 加藤 久喜

特集3-3 神戸市 分譲マンションの現状把握と管理適正化支援について
 神戸市建築住宅局政策課 

特集3-4 横浜市における要支援マンションに対する専門家派遣について
 横浜市建築局住宅部住宅再生課

特集3-5 仙台市 杜の都防災力向上マンション認定制度
 〜次世代へつなげる防災環境都市づくり〜
  仙台市都市整備局公共建築住宅部住宅政策課

特集3-6 大規模修繕工事における施工業者選定の適正化の取組み
 一般社団法人マンション適正管理サポートセンター 小野 利行/野村 善彦/平元 博之

特集3-7 管理不全マンションの自立化の支援について
 〜昭和49年11月竣工、鉄筋コンクリート造4階、16戸、自主管理〜
  マンション管理あり方ラボ株式会社 川口 宜人

特集3-8 高経年マンションの管理実態と長寿命化に向けた取組
 京都橘大学工学部建築デザイン学科教授/日本マンション学会会長 鈴木 克彦

特集4-1 高経年マンションを長く使い続けるための課題と対策について 
 野村不動産パートナーズ株式会社技術統括部
  ((一社)マンションリフォーム推進協議会総務委員会委員長) ヌ原 千朗

特集4-2 高経年マンションにおける災害対応力の強化に向けた取組 
 一般財団法人住総研研究推進部長 齋藤 宏一

特集4-3 高経年マンションの再生の動向その1
 −建替えや長寿命化改修等による価値向上への新たな取組み−
  株式会社長谷工総合研究所 高橋 徹

特集4-4 高経年マンション再生の動向その2
 −再生検討実務からの考察−  
  旭化成不動産レジデンス株式会社マンション建替え研究所所長 重水 丈人

特集5 マンションのサステナビリティの確保に向けて
 −政策動向等のまとめと今後の課題−
  国土交通省国土技術政策総合研究所建築研究部長 長谷川 洋

 

トピックス

令和6年度住生活月間                         
 住生活月間実行委員会事務局

 

令和5年度住宅関係功労者表彰                             
 一般社団法人日本住宅協会